先日、実家から連絡がありまして、「屋根裏部屋を断捨離してるんだけど、お前の荷物がけっこうあるからなんとかせい」というので、行って来ました。
実家には広さ2畳ほど高さ1.2mほどの屋根裏収納がありまして、28年前に結婚して独立した際、当面使わないものは持って行かずに屋根裏に放り込んでいったのでした。
その後ときどき実家に帰ることはあっても屋根裏を覗くことはなく、もはや何を置いていったかさえ憶えてない。
タイムカプセルを開けるような気分です。
屋根裏部屋に上がると、スキー板やルーフキャリアなどかさばるものもあったので、これは確かに年老いた母にはいかんともしがたいなぁ、と思った。
とりあえず引き上げて、市の清掃センターに持ち込むとするか。
ということで、マイカーに次々積み込んでいきました。
すると、掘れば掘るほどお宝アイテムが。
こいつぁなんでも鑑定団に出せそうだぜ、というようなものは当然なく、とはいえいくつか捨てがたいものも出てきました。
その中のひとつが、今回ご紹介するマトリックススピーカーです。
オーディオ評論家の故・長岡鉄男氏が考案し、オーディオ業界に一石を投じた、当時のマニアで知らぬものはいない有名なDIYスピーカーシステムです。
オーディオ誌上での発表当初はハンドメイドでカットした合板を組んだもので、45度の隙間ができてしまうところをパテで埋めた、いわゆるプロトタイプでしたが、反響の大きさから、スピーカーメーカーのフォステクスが斜めカット済み合板のセルフ組み立てボックスを販売するに至ります。
その組み立てボックスに当時自分なりに考えてアレンジした、コーラルの4A-60を4本組み込んで作り上げたマトリックススピーカーと再会したのです。
長岡鉄男氏オリジナルはフォステクスのFE103を採用していましたが、わたくしはFE103よりクセが少なく明るいサウンドという評価だったライバルの4A-60をチョイス。
一生懸命ニスを塗ったりして作り上げた思い出の品です。
低音が足りないとか、曲によってはモノラルにしか聞こえないとか、いろいろな不都合も多い個性派スピーカーではありますが、うまくハマったときの音場の拡がりは普通のスピーカーでは得られない快感がありました。
しかし、結婚を機に実家を出てバブル期でこれしか買えなかった極小住宅に移り住んだため、マトリックススピーカーを楽しむような趣味のスペースはなくなり、屋根裏に放り込んでいったのでした。
あれから28年。
時代は変わりました。
28年前、結婚の際に結納返しとして嫁さんに買ってもらった手のひらに乗るポータブルMDレコーダー(MZ-R2)、このような製品が進化していくものと思っていたオーディオ業界は、大きな地殻変動天変地異を経て、手の中のスマホからサブスクでハイレゾを気軽に聴く世の中になっています。
そんな時代にタイムスリップしてきたマトリックススピーカー。
再会した瞬間は邪魔だし即捨てよう、と思った。
屋根裏で過ごした28年の間に埃を被った綺麗なクリーム色だったはずのコーンは黒ずみ、センターコーンが凹んでいるユニットもある。
ですが、車で自宅に帰る途中、考えを巡らせてみると、やはりいまどきのシステムと音源で再生してみたい、という気持ちが強くなってきました。
夏場はかなりの灼熱、また湿度が高い時期もあっただろうけど平均的にはおそらく乾燥がちだったと思われる28年を経てきたことでしょう。
エンクロージャーとしては円熟味を帯びたいい感じの仕上がりになっているかも。ユニットはひどい劣化で使えなくなっている可能性はありますが。
一方送り込むソースレベルではこれ以上ないくらいにまでその音質は引き上げられています。
ということで、とりあえず聴くだけ聴いてみよう、と思いなおしました。
帰宅し、軽く拭き掃除してさっそくアンプをつないで音出し。
アンプはFX-AUDIO- FX-98E。
ソースはmora qualitasのハイレゾ音源をPCから出力し、TOPPINGのハイレゾDAC E30でアナログ変換します。
今どきのハイCPシステムです。
仮に世界最高のオーディオシステムがあったとして、それにいくらかかるかわかりませんがその音質を100とするなら、このチープなシステムでも90くらいまでは出てしまう時代になりました。
残りの10のために大枚をはたく必要性をもはや感じないです。
あと2年足らずで還暦の私。
認めたくはないが、自分の耳の周波数特性もダイナミックレンジもかなり劣化してきているはずですから。
モスキート音が聞こえなくなってからさらに20年は経過しているし。
それでも雰囲気?とか空気感?とかは感じることができるのかも知れないけど、そこに何万も注ぎ込むほどゆとりもない。
そんな金があるなら、孫に玩具のひとつも買ってあげたほうが幸福指数が上がるってもんです。
足るを知る、です。
能書きが長くなりました。
音を出します。
んー、こんな音だったっけ?
やはりユニットの劣化が進んでいるようです。
低音があまり出ず、思わず音量を上げたくなるが上げるとややビリつく。
エッジが硬くなっているのでしょう。
フランジ部分のリングも一部剥がれてきている。
しかし、ビリつかない程度に音を抑えて聴くと、女性ボーカルの歌声は透明感抜群。
4A-60らしさが垣間見えました。
あと、音量を上げられないこともあってか、アンプのホワイトノイズが気になりました。
4A-60は音圧レベル91dBとかなり高能率なので、安アンプのアラがクローズアップされてしまいました。
テクニクスSU-V9が懐かしい。
せっかくFX-98Eでそこそこ満足してたのに、寝た子を起こされた気分です。
まずい、オーディオ沼に引きずり込まれそうだ。
アンプは検討の余地があるとして、まずはユニットを今どきのものに交換してみたいなぁ。
つづく
2023年9月11日追記:
つづくつもりでしたが、Youtube上での空気録音が忙しくなり放置状態になっていました。
しかし、ついに、その空気録音でマトリックススピーカーを採りあげることができました。
しかも、北日本音響のフルレンジユニットという強力な助っ人を携えて。
興味のある方はぜひご覧ください。
低音が出ないというMX-1の悩みのひとつは払拭できましたね。
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